家猫しろ

■家猫しろ
■2046年生まれ。乙女座。A型。
■生まれてすぐの頃。両親の時代旅行に同行させられる。6年前に開発されたタイムマシンの不備により、現代に漂着。その後、コロラド州のウィリアムズ夫妻に育てられた。ちなみに両親の旅行先は、キリストの磔刑が行われたゴルゴダの丘だったことが後の資料によって判明している。
■12才の頃、深酒をしたウィリアムズ氏によって、自身が捨て子だったという出生の秘密を知り、産着とともに所持していたペンダントだけを手掛かりに、3年後に無免許で自分探しの旅に出る。
■ウィリアムズ氏が若い頃に載っていた大型のバイクを譲り受け、一人旅をしている途中、泊まったモーテルで強盗に遭う。この時、ペンダントを紛失している。独力で強盗を探し出し、強盗団が根城にしていた街はずれのダイナーへ単身乗り込む。この時あの力が覚醒したことは状況から容易に推測できる。あの力により、その場にいた全員を殺害したと思われるが、本人はこの時の記憶を消失している。
■また、この時の強盗団に結社の息がかかっていたという見方も出来るが詳細不明。
■ダイナーの状況は酷いもので、衣服を残して骨になるまで燃え尽きたとしか言いようのないダイナーの店長を始め、半身だけ凍り付けになったウェイトレス、マグカップと一体化した常連客等、目を覆いたくなる惨状だった。生き残った者も、ことごとく精神に異常をきたし、状況証拠以外にどんな証言も得ることが出来なかった。(行方不明4人、死亡12人、発狂者6人)
■何らかの時空間的なねじれ、及び歪みが局地的に発生したものと思われる。これにより、あの力を端的に窺い知ることが出来たが、当然のことながらその全貌は規模も含めて不明。
■旅行中であったネバダ刑務所に収容されたが、あまりにも危険な存在だという委員会の判断により、すアトランティック海底収容所へと移送が決定。しかし、移送中の事故で行方不明になる。軍による関与の可能性もあるが、これについて委員会下部組織である我々にはこれについて調査することは適わない。
■それからの1年間は全く記録が残っていないが、匿名を条件に結社の一員を名乗る者からの情報が我々の元に存在する。それによると、結社はペンダントを極秘裏に入手、家猫しろとの間になんらかの密約が結ばれたのではないか、ということである。
■ここからは我々の推測になるが、結社はなんらかの実験によって家猫しろが所持していたあの力を入手したものと思われる。諜報員として委員会が送り込んだ助手による報告でも、家猫しろがあの力を発動させたことがないことからもそれは明らかである。また、急速に勢力を増し、さらには委員会にまで強烈な圧力をかけるまでに至った結社の急速な発展もこれを裏付ける根拠となり得る。
■前述のウィリアムズ夫妻は、家猫しろが、この時代に漂着した時に現場に散乱していた漂着物も同時に回収していた。ペンダントを除いて、その他の漂着物はウィリアム婦人によって保管されており、委員会がそれらを回収できたことは、結社に対する大きなアドバンテージとなった。この時の漂着物は今後のタイムマシン開発に利用される予定である。また、これらの資料から家猫しろの出生年代、家族構成、旅行先などが判明したのは言うまでもない。
■様々な資料による調査結果として我々は、家猫しろがあの力を手放すとともに、これまでの記憶の全ても同時に失ったのではないかと考えている。また、この記憶抹消による副次的な事故等の報告がないことから、当時15才であった家猫しろには、別の15年分の記憶が新たに移植されたようである。
■ある筋からの情報によると、この時に移植された記憶の元の持ち主は、漫画家を目指していた家猫しろという当時15才の学生のものであった模様。ある難病によりその夢を断絶されつつ早逝した家猫しろの記憶をベースに、最新の人工知能を組み合わせたハイブリットが、現在の家猫しろの記憶であると考えられるがそれを確かめる術はない。
■現在、家猫しろは家猫しろとしてその人生を歩んでいる。何の力も失い、漫画を描くのが好きだという以外はごくごく普通の日本人である家猫しろは、もはや委員会が留意する存在とは言えなくなっている。
■結局ペンダントは家猫しろの手元には戻らなかったらしい。記憶とともにペンダントのことも忘れてしまったということらしい。おそらくペンダントは結社によって秘匿されていると考えるのが妥当だと言えよう。
■諜報として送り込んだ助手も、現在では委員会を脱会し、家猫しろといっしょに生活している。二人で漫画を描いたり、同人誌を製作しているようで、現在は『月刊ファフロツキーズ』という月刊WEB雑誌を発行しているらしい。ちなみに印刷代が1円もないそうで、まだ印刷本は実現していないという。